KANAZAWA VENTURE IT FESTIVAL 2019
REPORT

2019年3月16日(土)ITビジネスプラザ武蔵にて、金沢ITイベントの総決算「金沢ベンチャーITフェスティバル2019」が開催されました。

北陸地域で活動するベンチャー、IT、ものづくり関連事業者・団体の交流イベントが行われたサロンスペースCRIT(クリット)と、スタジオにて緊急開催されたセガゲームスプレゼンツ特別セッション「ぷよぷよeスポーツ」の様子をお伝えします。


開会挨拶

午前10時の開始時刻前から多くの来場者での座席が埋まり、期待に包まれるサロンスペースCRIT。

ITビジネスプラザ武蔵館長、土村 誠二氏の挨拶で金沢ベンチャーITフェスティバル2019は幕を開けました。


エンタメ道とは『自分が楽しむこと』と見つけたり

登壇者:瀬津丸 勝氏(株)セガゲームス 第2事業部サウンドセクション サウンドクリエイター

最初の登壇者は金沢市の鳴和で生まれ育ち、小学生のときに地元スーパーマーケット・ナルックスでゲーム音楽に出会ったという生粋の金沢人、瀬津丸氏。

金沢発祥のゴーゴーカレーが東京へ進出したとき、地元の味に東京で出会い感動した瀬津丸氏が、その感動を忘れないようにと曲を作り、ゴーゴーカレーに送り付けて店内BGMとして使用されたという経緯などを笑いを交えて例に挙げ、感動を体験しまくることで行動につながると説きました。

「楽しむ姿勢が大事」「仕事だと思ったら負け!」「運は行動の結果」「無茶振りは受けろ!」「やり過ぎくらいがちょうどいい」などのキーワードを来場者と一緒に唱和するというスタイルで進む参加型講話で、「好き」を仕事にすることの強さについて語った瀬津丸氏。
この原理はIT業界に限らず全ての仕事に通じる真理なのではないでしょうか


R&Dエンジニアと先端技術との戦い

登壇者:野秋 拓也氏合同会社 DMM.com CTO室 R&Dチーム 発明家 兼 VR研究室 xRエンジニア

合同会社 DMM.comの社内で分野を限定せず活動している新卒3年目の研究開発エンジニア野秋氏。アプリで焼き色を指定できるトースターを作ったり、社内イベント用のビールサーバーまで自作してしまう、自他ともに認める「発明家」です。

淡々とした語り口で、存在感をアピールするために業務サポートツールなどを作り発明家としての地位を確立した入社1年目から、ハードウェアウォレットの研究開発に携わった入社2年目、CTOが松本勇気氏に変わった3年目までの話をしてくれました。

新CTOの松本勇気氏が発表した「DMM TECH VISION」とは、技術戦略、データ戦略、広報・人事戦略、コミュニティ戦略の4点で取り組む改革であり、“より何でもありなDMMへ”の指標です。

  • 失敗が許容され誰もが素早くサービス開発できる土壌を支えること
  • 計測⇒データ分析⇒施策立案⇒サービスの提供…のループを作り出すこと
  • DMMがどこに向かっているのかを発信することによりモチベーションの向上に繋げること
  • 事業を横断したコミュニケーションを活性化させていくこと

などの施策を行い、「DMMのテックカンパニー化」をミッションとしています。

ちなみに、野秋氏のデスクは「野秋タワー」と呼ばれるDMM社内の名所で、社内見学の定番ルートにもなっているんだとか。

質疑応答では多くの手が挙がり、特に野秋氏の生い立ちや学習方法について関心が寄せられていました。


スタートアップ成功の秘訣

登壇者:曽我 弘氏株式会社ケミカルゲート CEO

「スタートアップ成功の秘訣」連続講話の1人目は、新日本製鐵(株)定年退職後にシリコンバレーへ移住し、様々な会社のスタートアップに関わってきた曽我氏です。

そもそもスタートアップとは(個人企業、中小企業、スタートアップの違い)という解説から始まり、「スタートアップ成功の秘訣は成功するまで失敗を重ねること」「私自身も失敗を繰り返している。今でも成功していない」など、実体験からの教訓や、今なお可能性を探求し続ける曽我氏の姿勢に惹きつけられた30分間でした。

「日本を救うのは今の10代なんじゃないか」と主張する曽我氏。最近は高校生の教育事業にも積極的に携わっているそうです。

登壇者:田所 雅之氏株式会社ユニコーンファーム CEO / 株式会社ベーシックCSO

続いての登壇は、世界で累計5万シェアされたスライド“Startup Science”の著者であり、日本とシリコンバレーで合計5社を起業してきたシリアルアントレプレナーの田所氏。

「起業家というのは優秀な医者になるべき。言語化できない深層の本音を探ることによって、ユーザー自身が気づいていない欲求を見つけることができる」
自分が作りたいものを作り、見たいデータだけを見るのではなく、「学習にフォーカスする」ことが大切であり、学習にフォーカスすることができるスタートアップは7倍資金調達できる可能性が高く、3.5倍早く成長できると語りました。


トークセッション

進行:加藤 英司氏独立行政法人中小企業基盤整備機構 統括インキュベーションマネージャー

曽我氏、田所氏の講話後、独立行政法人中小企業基盤整備機構 統括インキュベーションマネージャーの加藤氏が進行役となり、スタートアップについてのトークセッションが繰り広げられました。

「アメリカでは失敗を経験した起業家が評価される」と田所氏。その理由は失敗を経験した起業家はお金の怖さを知っているからです。一番評価が低いのは初めて起業する人なんだとか。

シリコンバレーと日本の常識の違いや、日本のスタートアップに期待することなどについて、両氏の考察を聞きながらメモを取る来場者の姿も多く見られました。


テクノロジー×殺陣パフォーマンス

パフォーマー、クリエイター、アーティストなどがコラボレーションし、独自の世界観を『パフォーマンス』として行うプロジェクトPerformance Project(パフォーマンスプロジェクト)による殺陣パフォーマンスでは、真桜氏(写真左)ともちこ氏(写真右)がスペースいっぱいに美しく舞い、会場内を魅了。

真桜氏の胸元と、もちこ氏の腰に着けられた光るアクセサリーは、レーザー加工機でアクリルをカットして作られたもので、殺陣の最初のジャンプを検出してLEDが光りはじめ、その後少しずつ色が変化するような仕組みになっていました。


ライトニングトーク

Talk1:河西 紀明氏DMM Blockchain Lab UXデザイナー/デザインストラテジスト

DMM.comに所属しながら、テニスインストラクターや猟師、ファーマー、ゲストハウスおじさん、バーテンダーなど多様な顔を持つ河西氏は、ブロックチェーンの一部の機能を使った学習の場づくりアプリQUEST(クエスト)について紹介。学習コミュニティの今後の在り方について思いを巡らせました。

Talk2:福岡 大平氏南加賀ジビエコンソーシアム 事業総括

イノシシ事業&研究をしている南加賀ジビエコンソーシアム事業総括の福岡氏は、イノシシに出会った時の対処法を実践形式で披露し場内を沸かせました。
イノシシの生態について身近な例を挙げてわかりやすく解説し、獣害対策チーム44Lab(ししらぼ)の活動内容について紹介。質疑応答では食肉加工施設についての質問が多く挙がりました。

Talk3:おばた みなこ氏ウェブマルシェ代表/Webデザイナー、Webライター、セミナー講師

フリーランスでWebデザイナー、Webライター、セミナー講師などの活動をしているおばた氏は、自身が主宰する、いしかわライターサロン、金沢シングルマザーの会、北陸変人会議、という3つのコミュニティについて紹介。
質疑応答では「どんな変人がいますか?」の質問に、金沢を自主的にパトロールしている見回り候・きのこアーティスト・爬虫類好きの人などを一部の例として挙げていました。

Talk4:秋田 純一氏金沢大学 理工学域 教授

「最近は炙り芸をやっている」という金沢大学理工学域 秋田教授。
ICチップを炙って崩し、中のチップを取り出して顕微鏡で分析をしているとのこと。
「どこの家庭にもあるバーナーでできるので、火傷と火事に気を付けてお試しください」と、終始つっこみと笑いが巻き起こる講話となりました。「#炙るとはいってない」が今後注目のキーワードとなりそうです。

Talk5:仲井 陽氏アニメーション作家/脚本家

フリーランスのアニメーション作家であり脚本家でもある仲井氏。
脚本について、人間は物語を通してシミュレーションをしているので、設定が常識外れであったとしても、そこで描かれる人間の行動が荒唐無稽でなければ感情移入ができると主張。会場ではうなずく人の姿が多く見られました。今の仕事スタイルになった経緯や脚本家の内情など、業界の外からは知ることのできない裏話を漫談風に語り、最後に「これはフィクションです」というオチで締めくくられました。


ブース展示

DMM.com

DMM.com展示ブースでは、登壇者の河西 紀明氏の著書や野秋 拓也氏が製作したMRヘッドセットなどに触れることができ、質問者の列ができていました。


セガゲームスプレゼンツ特別セッション
「ぷよぷよeスポーツ」

急きょスタジオを開放して開催することとなったセガゲームス プレゼンツ 特別セッション「ぷよぷよeスポーツ」の会場では、

  • プロ選手による白熱!エキシビジョンマッチ
  • プロから学ぼう!ぷよぷよのテクニック!連鎖組み方講座
  • みんなで対戦!一般のお客様とプロ選手とのエキシビジョンマッチ!

などのイベントが行われました。

緊急開催にも関わらず、Twitterの告知を見てプロ選手に会うために足を運んだという来場者も。今回出演したプロ選手はKuroro選手とあめみやたいよう選手。12連鎖も普通というプロ同士の対戦では、1勝負1~2分で決着が付くことも多いそうです。一瞬も目が離せないスピード感に息を呑む観客席。連鎖の攻防が繰り広げられる白熱した対戦の直後には拍手が沸き起こりました。

来場者vsプロプレイヤーのエキシビジョンマッチでは、ハンデとしてあめみやたいよう選手がコントローラーを逆さにして応戦。逆さコントローラーでのプレイは初めてだというあめみや選手は思うように操作ができず負けてしまいました。次のハンデは回転なし。これは苦戦しながらも勝利し、プロプレイヤーの意地を見せてくれました。

来場者との対戦中はKuroro選手とあめみや選手が交代で実況&解説。わかりやすい解説と軽快な実況が入ることでeスポーツ観戦が一段と面白くなります。プロ選手には実況のスキルも備わっているようです。


ベンチャー起業家、IT、ものづくり関連事業者の交流の場として大盛況で幕を閉じた金沢ベンチャーITフェスティバル2019。 価値ある学びと刺激的な交流によって、ITビジネスプラザ武蔵からまた新たな創造が始まる予感がします。